ボロクタ雪

僕が土建屋で重機のオペレーターだった時代。
今日みたいなベチャベチャのボタボタ雪が降って仕事にならない日があると年配の人夫さんが「土方殺すにゃ刃物はいらぬ、雨が三日も降ればいい」とよく言っていた。
まぁ外仕事の日雇いは天気悪いとどうにもならんと言う例え話なんだけど、雨ならまだしも湿気の多いベチャベチャで重たい雪は現場もベチャベチャドロドロになるし、掘っても埋めても後始末が大変で本当にいい事が一つもない「ボロクタ雪」って言ってた気温の高い時の雪は山陰らしいと言えば山陰らしいこの時期の風物詩。
20年以上前のそんな記憶を今でも思い出すのは、普段工房で籠もってる僕でも作業の合間にテストしたいルアーがあるのに、農繁期じゃ無いこの時期水位のある水辺がほとんど無い環境で限られた池に雪で行けないとかってなるとふと「このボロクタ雪め…」って言葉と一緒に昔の現場の風景を思い出す。
重機オペレーターで一生暮らすと思ってた当時、まさか自分が専業ルアーメーカーになるなんて、ましてやルアーメーカーだけで生活してるなんて微塵も考えた事も無かったのに。
今となってはルアーメーカーのキャリアが土建屋の倍以上、人生の半分にまでなってしまった。
思えば遠くへ来たもんだ的な放浪記みたいな人生だけど、ジタバタしながらまだまだ歩き続けるしか無い。
ボロクタ雪に踏み跡をつけるみたいに足元を溶かしながら次の季節を思ってただただ前に。